健康保険(療養費の支給)での治療について
■制度の概要
病院、診療所等で、医師による治療を一定期間以上受けても改善が見られず、保険医による適当な治療手段のない状態であり、鍼灸治療の適応疾患で治療効果が期待出来ると医師が同意した場合に、健康保険による療養費の支給という形で、保険による治療が出来る制度です。
ただし、患者さんが、一旦、医療費の全額を負担し、保険者の窓口に申請する事により保険給付分が後払いされる償還払い方式の「療養費払い」の扱いとなります。
(この制度は健康保険法の第44条の第2項に規定されています)
■治療対象
対象となる病気の種類には、制限があります。
・神経痛
・リウマチ
・頸腕症候群
・五十肩
・腰痛
・頚椎捻挫後遺症
・その他、疼痛を主症とする疾患(この場合は、保険者に事前確認が必要です)
ただし、リウマチ等の膠原病については医師による治療を継続する必要があるので、鍼灸と併用治療が認められていない現状では、実質的に療養費の適応外です。
リウマチ等の膠原病で鍼灸と医師の治療の併用を考えている方は、療養費ではなく、通常の治療費にて通院を御考え下さい。
■医療先行
鍼灸治療を受ける前に、まず病院で医師による治療を受けて下さい。
上記の対象疾患であることが前提となりますが、一定期間の治療によっても改善がみられない場合で、保険医による適当な治療手段のない状態であり、医師に鍼灸治療を受けてもよいという意味の「同意書」を書いて貰える場合は、保険による鍼灸治療を受けられます。
2018年10月以降、医療先行でなくとも、同意書を発行してもらえるように制度が変更されましたが、医師の治療を受けていない、治療の効果が出ているのか確認出来ない状態で、同意書だけ発行して貰うことは、医師に対して失礼ですし、非常識な行為ですので、当院ではお勧めしていません。
そもそも、2018年10月以降、保険医による適当な治療手段のない状態の時に、同意書を発行するように、同意書裏面に明記することが義務付けられ、この記載のない同意書は無効になりますので、鍼灸の保険治療を検討する前に、医師による一定期間の治療と経過観察は必須です。
(同意書の用紙は、当院でお渡ししています)
■同意書の有効期間
同意書の有効期間は約6カ月です。
・1日〜15日までに同意書を頂いた場合には、5ヶ月後の月末まで有効。
・16日〜月末までに同意書を頂いた場合は、6ヶ月後の月末まで有効。
例)6月1日に同意書が発行された場合、6月1日〜11月30日まで
6月16日に同意書が発行された場合、6月16日〜12月31日まで
また、同意書が発行されてから1週間以内に、鍼灸の治療を開始する必要があります。
約6カ月の有効期間を越えて更に保険による鍼灸治療を延長する場合は、医師の再同意が必要となります。
この場合、再度、医師から「再同意」の同意書を発行してもらって下さい。
■病院での併行治療は不可
鍼灸治療を受けている間、同じ病名(「同意書」に書かれている病名)で医院や病院で治療・投薬を受けると、療養費が支払われなくなります。
やむを得ない状態で、痛み止めや湿布を処方されたとしても、処方された薬の服用期間は、鍼灸の療養費の請求は出来ません。
ただし、同意書の有効期間内でも、医療機関による診察や検査は構いません。
なお、2018年10月以降、病院の診察日と同日中に鍼灸治療を行なうと、医療併用とみなされる事例が出ているので、病院に来院する日以外に、当院に来院して下さい。
また、制度上、時間外や休日診療については認められない為、通常の診療時間内に来院して下さい。
■申請窓口
千葉市の国民健康保険の場合、各区役所の保険年金課で申請を受け付けます。
それ以外の保険者は、保険証に記載された問い合わせ先にお尋ね下さい。
■療養費支給申請の方法
国民健康保険の場合は問題ありませんが、保険の種類によっては、各種制限事項や手続き方法に違いがありますので、あらかじめ保険者に下記の事項などについてお問い合わせのうえ、場合によっては「療養費支給申請用紙」を取り寄せておいて下さい。
・鍼灸治療の前に受けておかなければならない医師による治療の期間(先行期間)
・保険が適用される病名について
(医師に鍼灸治療の「同意書」を書いてもらう必要がありますが、適切な病名でないと支給されない場合があります)
医療先行期間が過ぎたら、治療を受けている病院や医院から「同意書」を発行してもらって下さい。
「同意書用紙」は、当院でお渡ししています。
同意書の発行から1週間以内に、当院に同意書を提示の上、鍼灸治療を受けて下さい。
1ヶ月毎に、まとめて治療費の「領収明細書」を発行します。
「療養費支給申請用紙」に必要事項を記入し、「同意書」と「領収明細書」を添えて、保険者に提出し請求して下さい。
(通常、1ケ月ごとに請求するのが適当です)
支給は審査があるので、請求後3〜5カ月以降、指定の口座に振り込まれます。
■手続きに必要な物
基本的に、支給申請の手続きには、以下が必要です。
・健康保険証
・印鑑(ゴム印は不可)
・銀行の通帳等、振り込み口座が確認出来るもの
(国民健康保険の場合、世帯主名義)
■療養費支給額
保険の種類や本人・家族の違いによって異なりますが、1回につき下記の金額が保険者側から支給されます。
・鍼、または灸の1術治療の場合:
3割負担の方=¥1,365 / 2割負担の方=¥1,560 / 1割負担の方=¥1,755
・鍼・灸を併用した2術治療の場合:
3割負担の方=¥1,561 / 2割負担の方=¥1,784 / 1割負担の方=¥2,007
※ 上記は、令和6年6月1日 改定後の金額です(初回治療時のみ金額が若干上乗せされます)
■混合診療
保険で治療を行なう場合、疾患部位のみの治療しか、保険では認められていません。
しかしながら、鍼・灸などの東洋医学は、全身の状態を調整して治療するのが基本です。
このため、病院では保険者との協定の為に認められていない、保険診療と保険外診療の「混合診療」が、鍼灸院では可能です。
当院では、原則として保険診療のみの治療ではなく「混合治療」で行なっていますが、治療料金は、通常の当院の治療費と同じですので、療養費の支給分、若干、患者さんの負担が軽減される形となります。
ただし、患者さんの御希望により、保険診療のみの治療も行なう事も可能な場合はありますので、御相談下さい。
なお、マイナンバーカードの保険証利用は、2024年6月末にカードリーダーを導入し、端末登録も行ないましたので、当院でも利用可能です。
ただし、通信障害やアプリの不具合などで情報が読み込めない場合もありますので、念の為、健康保険証または資格証明書をお持ちになっていただくと助かります。